2006/05/12 例会
「わが青春のマリアンヌ」 1955年 フランス/ドイツ 106分
監督: ジュリアン・デュヴィヴィエ
原作: ペーター・メンデルスゾーン
脚本: ジュリアン・デュヴィヴィエ
撮影: レオンス=アンリ・ビュレル
音楽: ジャック・イベール
出演: マリアンネ・ホルト
イザベル・ピア
ピエール・ヴァネック
ジル・ヴィダン
ジャン・ガラン
ホルスト・ブッフホルツ
戦後のデュヴィヴィエ作品としては高く評価されていい一編だろう。
多分に文学的傾向が強いが、鬱蒼とした森の神秘性などセットとロケ取り混ぜてうまく出し、主人公の少年二人の美丈夫ぶりも手伝って、
寄宿舎ものなど愛好する耽美派の向きにもご納得の作品ではないか。
美しい湖を望むインゲリシュタット館で寄宿生活をする身よりのない少年たちの仲間に、南米アルゼンチンから来たヴァンサン(ヴァネック)が加わった。 ギターをつま弾き優しい歌を唄い、動物たちにも好かれる彼に作品の語り手であるマンフレートは魅了される。
仲間の一部、“強盗団”を名乗る連中は、新入りの試練を与えようと向かいの“幽霊城”と呼ばれる古城へ彼を連れていくが、
番人に犬をけしかけられて彼一人おいて逃げ帰ってしまう。が、そこで彼は、自らを囚われの身だという美少女マリアンヌに出会い、心奪われる。
そして、その夜は嵐となった。館長の姪のリーズはヴァンサンに焦がれていたので嫉妬し、彼の寵愛する鹿を殺した。
やがて、ヴァンサンはただ“助けて”とだけ記されたマリアンヌの手紙を受け取ると、一目散に湖を泳いで渡った。
彼女は既に、もうすぐ城主の男爵と結婚せねばならない−−と訴える。が、彼女と逃げ出そうにも、巨漢の番人と猛犬に阻まれて果たせず、
ボロボロになってヴァンサンは館に舞い戻る。そして、再び、マンフレートと共に城へ向かうが、そこはもぬけの殻で、
ただマリアンヌの肖像画が残されるのみだった。仏語版と独語版が、主役以外はキャストを変えて、並行して撮られたという、
オーストリアのフィッシェル湖畔を舞台にした、青春のロマン溢れる佳作だが、惜しむらくは、マリアンヌを演じるホルトがただ整った美人という印象で、
サムシング・エルスに欠けること。ヒロイン次第で叙情の深みは違ったはずだ。